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第5章:すべてが終わる日 5

Author: 社菘
last update Huling Na-update: 2025-07-17 17:00:34

 ベルティアとノアはレイク家で夕食を共にし、日が暮れて夜の帳が降りた頃に森の中へと足を進めた。

「ベル、手を」

「そんな、大丈夫ですよ?」

「お前の手に触れる口実だ。言わせないでくれ」

「……それは失礼しました」

 恥ずかしそうに笑うノアの手を取り、ゆったりとした足取りで歩き出す。ただ、あまりにも辺りが暗いのでベルティアが人差し指でスッと宙を切ると、二人の周りだけがほわっと淡く輝いた。

「驚いた。もう魔法を習得したのか?」

「習得というか……体が“思い出した”みたいです」

「そうか、元々魔力がすごかったと言っていたものな」

「まだそういう感覚には慣れませんが、魔力が暴走する恐れはなさそうです」

「ベルや家族が望めば、レイク家はベドガー家のように伯爵位を与えられるだろうな。ただそうなると、グラネージュでは衰退しつつある魔力回復事業をベドガー家と同じように担う必要があるが……」

「国のために必要なことであればもちろん協力しますよ」

「……伯爵位を授かれば、俺とベルが結婚することに反対する人は出てこないだろう」

 ノアの言葉にベルティアはハッとした。グラネージュでは王族と結婚できる身分は伯爵位以上と決まっているので、ノアはひどく嬉しそうに笑っている。彼がそう言っても爵位を授けるのを決めるのは国王陛下なのだが、男爵令息に正式な婚約の申し込みをするため陛下を説得した王子なので、レイク家がもう一つの魔術師家系だからと説得したら本当に爵位も授与されるかもしれない。

 ベルティアは呪いのことを知るより前(正確には、前世のことを思い出す前)は身分とバース性の違いでノアのことを拒否していたけれど、今となってはそのどちらも理由にできなくなった。呪いに関しても今から解きに行くので、本当にもう逃げ場はない。

 《ノア・ムーングレイ 好感度:99%》

 彼の頭上に表示されている数値を見て、今は不思議と幸福感でベルティアの小さな胸は満たされてい

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